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【Syncable Journal Club】CharityとPhilanthropy

寄付のことを考える海外のブログ・学術論文を翻訳して、それぞれに論考を深めるSyncable Journal Club。今回はこの記事から「Charity と Philanthropy」について考えたいと思います。

Charity Vs. Philanthropy: How Are They Different? ; Giving Compass

Giving Compassは、個々のドナーが問題について学び、関与し、影響を与えるのに役立つ信頼できるプラットフォームとして機能します。米国では、非営利団体への寄付の80%は個人からのものです(GivingUSA)。私たちが与える量は重要ですが、私たちがどのように与えるかも重要です。私たちは、インパクトドリブン慈善活動(IDP)の原則に導かれています。
【Giving Compass】

単語の定義

人はCharityとPhilanthropyをどのように定義し、それは私たち一人一人にとって何を意味するのかを考えています。

たとえば2004年以来、“charity”よりも“philanthropy”の方がGoogleで検索されていることを受けて、寄付者の興味・関心がどのような寄付先に向いているのかを論じています(下記、文章まとめ)。

■Charity(gift)
- Charityは当面の状況に対する対処について起こる、自然で感情的な衝動(突発的・短期的)
- 検索クエリとしてはdonations, charitable giving, giving, children, charity ratings, charity organizationsと強い相関関係がある
- 支援者の営みとしては、寄付金やボランティアの形をとる

■Philanthropy(gift)
- Philanthropyは社会問題の根本原因の特定と改善策実施についての、より戦略的なアプローチ(長期的)
- 検索クエリとしてはmanaging, creating, knowledge, research, and organizationと強い相関関係がある
- 支援者の営みとしては、寄付やボランティアに加えて、一部の慈善家は擁護活動に参加する

災害救援は、CharityとPhilanthropyの両方の役割を果たす

ニュースやソーシャルメディアで悲劇を目にしたとき、私たちの多くは緊急時に基本的な必需品を支援する傾向にあります。Googleによる「 Charity 」の検索と関連キーワードは、2005年のハリケーンカトリーナを取り巻く期間に史上最高に達しました。また、2004年のスリランカ津波のときは「 Charity 」の検索で2番目に支援先がヒットしました。

どちらの場合も、検索数はピーク時に約5倍に増加しており、災害が起こった際に人は他者を助けたいと願う気持ちが表出することを物語っています。

一方、これらの検索から惹起された行動はCharity的な寄付(Charity(gift))であり、Philanthropy的な寄付ではありません。

Philanthropy的な寄付(Philanthropy(gift))を志す人々は、災害の緊急救援・復旧だけでなく、予防から準備、回復に至るまでの災害救援のライフサイクル全体に注目することが知られています。

寄付者は寄付のみならず、高齢者や貧困層などの特定の集団に焦点を当てたり、システムを改善するために利害関係者と直接協力したりする場合もあるそうです。

各種事業内容をCharityとPhilanthropyで分類すると・・・

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事業が成果とする目的を達成する時間軸を縦軸、できるのかどうかの実現可能性を横軸に配して表にしたものがこちらです。作成においては京都大学経営管理大学院で寄付の研究をしておられる渡邉文隆さんの資料を改変・使用しております。

たとえば"途上国の医療支援"という団体があったとして、法人としては一つであっても、その中で直接的な医療支援(Charity)から現地の医療コーディネーターの教育・育成プログラム提供、政策提言による法改正(Philanthropy)と様々な事業が展開されていることがあります。

このように、同じ団体内であっても取り組みの切り口や各種事業内容のゴールとするところが異なるとき、それぞれがCharityとPhilanthropyの要素を持つことになります。

継続的な寄付をあつめるために求められることとは

Philanthropyな事業は、Charity的な面を積極的に見せることでクラウドファンディングなどの期間を限定したファンドレイジングが成功しやすいと考えます。なぜなら、”今”寄付をする必要性が伝わりやすくなるからです。

例えば、弊社にてマンスリーファンディングを実施した北海道こどもホスピスプロジェクト。

こちらの団体様は、北海道にこどもホスピスを作り、病気とともに生きるこどもやそのきょうだいご家族が安心して過ごせる場所をつくっていくことを目指しています。

こどもホスピスの建設には数億円、運営・維持を含めるとさらに多くのお金が必要ですが、それらが直ぐに実現する訳ではなく定常的な経営基盤の弱い状況下での運営を余儀なくされます。

■Charity(gift):こどもホスピスという場所づくり
■Philanthropy(gift):(病気を抱えた終末期のこどもとそのご家族をはじめとする碑益者の)宿泊を伴った支援

そこで、このような表現を双方含めて伝わるようなストーリーラインを設計することで、事業の緊急性と将来性のどちらも伝わるような表現となります。

緊急性を表現することは「なぜ今支援する必要があるのか」という動機付けが強まり寄付の意思決定を促しますし、将来性を表現することは継続的な支援の合理性を訴え納得感を醸成することに繋がります。

他にも、児童養護施設の退所者への支援を目的とした事業の場合、Charity的な要素・Philanthropy的な要素どちらも含んでいると考えられます。

■Charity(gift):児童養護施設を退所した若者のための住居の支援(ハウジングファースト)
■Philanthropy(gift):中長期的な自立支援・就労支援

Charityの側面を見せるべく、児童養護施設を退所した若者の生活を成り立たせるという点で訴求しつつ、Philanthropyな要素では中長期的な自立支援の必要性を訴求できたと考えます。

CharityとPhilanthropyの両立がファンドレイジングでは不可欠

Charityな事業はPhilanthropyな面のある事業に取り組まなければ継続寄付を公募しづらいと想定されます。

”Charityは当面の状況に対する対処について起こる、自然で感情的な衝動(突発的・短期的)”とありますが、継続的な寄付を集めるためには、Charity的な事業であっても定期的にその”感情的な衝動”を寄付者に対し再熱させていく必要があると考えられるからです。

例えばDVシェルター、 紛争地・被災地の医療支援、 海外での心臓移植手術というような事業は特定の課題が一つ(シングルイシュー)であり、その課題のみに抱かれる感情に起因して寄付が行われるため、単発寄付になりがちです。

もし単発寄付をした人に対して継続的な寄付を求める場合、「継続寄付によって、○○さんと○○さんと○○が救えます」という情報や「法律・制度を変えていくための政策提言を継続します」という取り組みを情報発信しなければ、寄付者の中で”根本的な問題解決はできないのか?”と疑念を持ち始める人が出てくるのではないか、と考えます。

その一方、Philanthropy的な事業であっても寄付者に感情的な衝動を抱かせる(≒Charityな事業に対し寄付をする対象を取り入れる)には、寄付者が身近に感じられる様な対象を提示し続けることが必要だと考えます。

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このようにPR・情報発信においては、Charity・Philanthropyどちらの側面も持ち合わせたものとすることが継続的に寄付を公募する上で重要であると考えます。

団体でお困りの方は、ぜひ弊社のファンドレイザーまでご相談くださいませ。