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【デジタルファンドレイジング入門】ファンドレイジング戦略を考えるためのSTP分析とは?

STP分析とは、セグメンテーション(市場細分化)、ターゲティング(狙う市場の決定)、ポジショニング(自団体の立ち位置の明確化)の3つの英単語の頭文字をとって名付けられた分析法。 マーケティング論で知られるフィリップ・コトラーが提唱したフレームワークで、業種や商材などを問わず活用できます。

新たな寄付キャンペーンを展開するにあたって、自団体そのものや事業内容、向き合う社会課題などの立ち位置を明確にすることは必要不可欠。ファンドレイジングを取り巻く環境を理解してどのような立ち位置を取るかによって、その後の戦略はもちろん、支援者・寄付者の関係人口を得られるかどうかまで影響を及ぼすからです。

STP分析では、セグメンテーションで市場の全体像を把握し、ターゲティングでその中から狙うべき市場を決定し、ポジショニングで競合他社との位置関係を決定します。

ここで常に意識したいポイントは「寄付者目線」。寄付者の行動を客観的に把握し、それに応じた事業展開を行うことが、STP分析をより有意義にする秘訣です。

STP分析によるデジタルファンドレイジングの方法論

一般論として、クラウドファンディングをはじめとするデジタルファンドレイジングでは"支援者1/3の法則"というものが知られています。

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「私たちは、1/3、1/3、1/3という考えが好きです。インディーゴーゴーはあなたの成し逐げたいことを倍増することができます。もし、ご自身で0ドルしか集められなければ、インディーゴーゴーはゼロ倍しかできません。まず、少なくとも金額の1/3は『自分のネットワークを通じて』自力で集める必要があります。次の1/3はあなたのネットワークの友達を通じて集まることが多い。そして、最後の1/3をインディーゴーゴーが見つけてくるのが平均的です」

要するに、「最低1/3は自分の直接の友人知人からお金を集めなくてはいけない」ということです。

これは「インディーゴーゴー」で過去数年のデータから集められた数字によるものです。実際これは、「インディーゴーゴー」だけではなく、クラファンサイト全般によく当てはまってきます。

【出典:最低1/3は、自分の直接の友人知人からお金を集めなくてはいけない | クラウドファンディングで夢をかなえる | ダイヤモンド・オンライン

寄付キャンペーンの準備フェーズにおいてこの法則と共にSTP分析をすることで、その寄付キャンペーンの成功率をグンと高めることができます【下記、STP分析によるデジタルファンドレイジングの方法論まとめ】

【フォーマット】デジタルファンドレイジング企画書

このように、セグメンテーションによるセグメントの定義とそれぞれのターゲットに向けて求められるだろうファンドレイジングの方向性を考えることで、抜け漏れなく寄付者とのコミュニケーションを考えることができます。

ステークホルダーピラミッド (2)

弊社のデジタルファンドレイジング伴走支援では、これらのフレームワークを使用してステークホルダーピラミッドを作成・ドナーチャート(※誰が寄付者になり、寄付を幾らしてくれるのか?のシミュレーション)を共に考えております。

今回は、このようなSTP分析を基にした寄付キャンペーンの考え方について考えたいと思います。

S:セグメンテーション

セグメンテーションは、似たようなニーズを持つ寄付者層に分けて考えることを意味し、市場細分化と訳されます。

新しく寄付キャンペーンなどを展開するにあたって必要な視点の1つが「利用してもらいたい寄付者像を明確にする」こと。ターゲットが明確でない場合、具体的なペルソナ設計もできないため、誰のどのような問題の解決を目指した事業なのか、曖昧になってしまいます。

さまざまな指標を用いて市場を分ける作業を行うことで、自団体の事業内容を本当にサポートしてくださるのはどのような寄付者なのか、明確にしていく作業がセグメンテーションです。

下記はセグメンテーションで使用する切り口です。ファンドレイジングにおいては特にビヘイビアル属性を使用することが多くありますが、幅広い年齢層に向けた情報発信をするときなどにはデモグラフィック属性を精緻に見ていく必要があったり、事業内容の方針を定義してコミュニケーションをするときなどにはサイコグラフィック属性ごとに接点を考える必要があったりします。

ジオグラフィック属性:
国・地域・都市の規模・進展度・人口・気候・文化・宗教・政策など

デモグラフィック属性:

年齢、学歴、性別、収入、世帯規模、職種、役職、クレジットカード番号など

サイコグラフィック属性:

活動、興味、意見、考え方、意思決定の基準、他者への影響力など

ビヘイビアル属性:

団体との関係性、問い合わせ数、資料請求数、営業数、購入数、離反率、Webサイト閲覧、デジタル広告との接点など

自社・自団体との接点の量・質をパラメータとして持っておくことは、ファンドレイジングにおける基本原則です。容易に、継続して取得できるデータをいかに設計して分析・改善に繋げていけるかが求められると言えます。

T:ターゲティング

ターゲティングとは、市場の中から狙うべきターゲット層を絞る作業で、セグメンテーションとセットで使用されます。

セグメンテーションとターゲティングの違いは、セグメンテーションが市場を「分ける」作業であることに対して、ターゲティングは分割された市場の中から狙うべき市場を「絞る」作業に当たる点です。

P:ポジショニング

ポジショニングは、セグメント内の競合の事業を見て自団体の立ち位置を決定する作業です。

ポジショニングを行う上で大切なのことは、競合と比較する軸を持つこと。値段や、品質、施設数、寄付者との接点・チャネルなど、多くの指標の中から有用なものを選び、競合と比較します。

ニーズのある市場でも、例えばすでに大手が進出している場合は、一般的にはそこで支援者・寄付者を開拓することは難しい傾向にあります。しかし、すでに進出している大手にはない要素で差別化できれば、新たな支援者・寄付者を得られる場合もあるでしょう。

このように、そもそも競合はいるのか・いる場合はどの程度の規模なのか・強みは何か、などを調べ、自団体が勝負できるポジションを探すことがポジショニングの基本です。

STP分析のまとめ

STP分析は、現在世の中に出ている商品やサービスの多くに当てはめることができる理論です。そしてそれは、デジタルファンドレイジングも例外ではありません。

寄付市場ですでに大きなシェアを獲得している慈善事業などがどのように考えられたものなのか。実際に自団体の寄付キャンペーンなどを新展開していく際に活用できるよう、今回のSTP分析を行って他団体の現況を研究してみることをオススメします。